もしも、あの時、起業していたら…
ふと、そんなことを考える夜、ありませんか?
「もしも…、親父の会社を継がずに、やりたいことや好きなことで起業してたら、今頃どうなっていたんだろうなぁ?」
こんなことを考えたからと言って。
別に、今の仕事が嫌なわけじゃないし。
会社が、うまくいっていないわけでもない。
それでも、ふとした瞬間に、頭をよぎることがある。
具体的にではなくて、ほんとうに微かに脳裏をよぎる感じ。
だから…
「俺、あのまま自分の好きなことで、起業してたら、どうなってたんだろうなぁ」
何気ない呟きです。
私はこれまで、本当に多くの後継者の方と、お会いしてきました。
もちろんその中で、たくさんの声を聞いてきました。
そして、実は、今回取り上げた、この「もしも」を、一度も考えたことがないという後継者に、ほとんど出会ったことがないんです。
当然ながら、人間には、いろんな選択肢があります。
そして選ぶのは自分ですから、自由だったはずです。
でも、小さなころからこう言われ続けて育ったのですよね。
「この会社のあとつぎはお前だからな!しっかり勉強するんだぞ!」
って。。。
とは言っても、これは全ての後継者さんに行く質問なのですが。
「他にやりたいこととか、得意なことで起業しようと思ったことはないんですか?」
この質問に対して。
継ぐ前、確かにやりたいことがあった、という方は、ほんとうに多いです。
選べなかったというだけで、もしかすると全員かもしれません。
デザインの仕事、飲食店、あるいは、まったく違う業界での挑戦。
それを、脇に置いて、父親の会社に入った。
もちろん、後悔なんてしていない、そう仰います。
「公開?していない…、はずなんです」と。
でも、決算書を眺めながらの、一人っきりの深夜、ふと、思う瞬間があるそうです。
もし、あの時、自分の好きな道を選んでいたら。
今頃、もっと楽しく、もっと自由に、仕事ができていたんじゃないだろうか。
もちろん、それで失敗していたかもしれない。
でも、少なくとも、それは自分で選んだ失敗だったはずだから、公開なんてないだろう。
そんなことを、考えてしまう。
これって、普通です。
むしろ、当たり前の思考ですよね?
だからこれは、決して珍しいことではありません。
先代からしてみれば、「継いでくれて、ありがたい」以外の何物でもないでしょう。
社員からしても、「継いでくれたから、今、自分たちの生活がある」わけです。
だから、この「もしも」を、誰かに言うわけにはいかない。
そう思っている方が、ほとんどであるはずです。
言ったところで、どうにもならないことも、わかっていますからね。
今さら、起業の道に戻ることは、現実的ではないし。
まぁ、この会社を放り出すことなんてできないですし。
それでも、ふと、頭をよぎってしまう。
これは、弱さなのでしょうか?
それとも、ただの、人間らしい想像力なのでしょうか?
私は、こういう「もしも」を、否定する気には、なれません。
継ぐという選択をした方は、みんな、心のどこかに、選ばなかったもう一つの人生を、そっと抱えています。
それは、後悔とは、少し違う気がします。
もし、あの時、別の道を選んでいたら、という、ただの想像の余白です。
その余白があるからこそ、今、この道を歩いている自分を、時々、確認できるのかもしれません。
ではなぜ、私がほぼ全ての後継者に、「継がないという選択はなかったのですか?好きなことで起業しようと思いませんでした?」などと、少し意地悪な質問をするのでしょうか?
わかりますか?
でも、今日は答えは出しません。
ただ、もし、あなたも今、そんな夜を過ごしているとしたら。
それは、あなただけじゃないということを、お伝えしておきたかったのです。
多くの後継者が、あなたと同じ夜を、同じように、静かに過ごしています。
付け加えておくなら、ここで “後悔” を感じている人には、ちょっと大きな方向転換をしてもらわなければならないかもしれません。
勘の鋭い人ならわかりましたよね?
そう、他の道に進んだほうが良かった?と、思っている人に、会社のトップは務まりませんから。
だから私は、全ての後継者に“あの質問”をします。
そして「この道で良かった」さらには「この道しかない」と思える人が、会社を自分の代でもしっかりと存続させていくはずだから。
ちょっと大げさな言い方で申し訳ないですが、日本にはこういう人を的確に例える言葉があります。
「背水の陣」を敷いた人。
とはいっても、脳裏をかすめるこの思いを封じ込めることはできませんし、そうするべきではありません。
そこは、人生の余白として、大切に。
それではまたお会いしましょう。
「思考資産」承継デザイン研究所
霧香ゆうひ
デコーダー/心理カウンセラー/作家


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