「デコード?そんなの今どき、AIでできるだろ」
― 事業承継の核心「デコード」とAIの話、※今日時点ですよ ―
霧香のひとやすみコラム
私の肩書「日本で唯一のデコーダー」を見られて、もしかすると?口には出さないけれど、心の中でこう思う人もいるかもしれません。
「デコーダー?デコードする人のこと? そんなの今どき、AIでできるんじゃないか?」
……はい。
とってもとっても!わかります。
私も、その声を聞いたら、思わず頷いてしまいます、きっと。
だって、今のAIって、本当にすごいですからね。
私自身、毎日のようにAIと一緒に記事を書いて、マーケティング戦略を練り、使い倒していますから。
文章を整理したり、長い話を要約したり、バラバラに出てきた情報を並べ替えたり。
「これって、つい数年前だったら何時間かかったんだろうか?」
そう思うことも、珍しくありません。
だから、私が行っている事業承継をうまく進めるための聞き取りでも同じかもしれません。
たとえば、先代経営者とのインタビューは、トータルすると、多い時には数十時間分の録音になることもありますし、聞き取りながら書く、膨大な記録があったとして、それを文字に起こし、整理し、何度も出てくる言葉を拾い、話の流れをまとめる。
これはもう、とんでもなく大きなため息の出る仕事でした。
だけど、こういう仕事ならば、AIは驚くほど速いですよね。
速いというより、むしろ一瞬?です(笑)。
しかも、私が全力で集中していても読み飛ばしてしまいそうな小さな繰り返しまで、完璧に拾ってくれます。
「この話者、この言葉を何度も使っています、特に核心に近い言葉には必ずこの言葉が前置きとして出現しますね」
なんて教えてくれるわけですから。
正直に言えば、最初はちょっと悔しかったし、もしかすると怖かったのかもしれません。
「これまで、私が何時間もかけていたことを、こんなに早く……」
と思いましたよ、正直。
そんな、敵対?(笑)していた、私とAIですが…。
実を言うと、今ではすっかり仲間です。
というよりも、今、最も信頼できる相棒です!
だから、
「デコードなんて、AIでできるだろ?」
と言われたら、
「はい。それはもう、“かなり”できます」
と答えます。
今はもう、そこから話を始めたほうがいい。
そうとすら思っているのも事実です。
ただ。。。
ほんの微かなことなのですが、先日、ある会長さんの話を聞いていて、少しだけ立ち止まったことがあったんです。
聞き取りが始まって、もう2時間を過ぎたころだったと思います。
それまで会長さんは、若いころの話をイキイキと話していました。
「あの頃はなぁ、そりゃあもう、大変だったよ、今の若い連中に話しても理解すらできんだろうがね」
こんな
「俺が若いころはな……」
そんな話が延々と続いていました。
いわゆる、武勇伝ですね。
人は、この武勇伝を、飽きるほどに話して、ある意味での自己満足に浸ってもらわないと次に進まない構造を持っているので、この武勇伝に、真剣に耳を傾けるのも、私の大事な仕事なのです。
私は相づちを打ちながら、話を聞いていました。
そして、しばらくして。
会長さんが湯呑に手を伸ばしました。
一度持ち上げて口元まで運び、でも飲まずに、そのまま湯呑を机の上へ戻しました。
そして、
「……そう言えばな」と。
ほんの少しだけ、声の調子が変わります。
そこから出てきたのは、30年近く前の、ある判断と決断についての話でした。
「なぜ、あのとき会社をその方向へ進めたのか?」
「なぜ、あの人にはあえて何も言わなかったのか?」
そして、その判断と決断のわけを、今まで誰にも話さなかった、その理由まで。
そんなものは当然、資料にも残っていません。
議事録にもあるわけありません。
社史にもありません。
もちろん、インターネットで検索しても出てくるわけがありません。
その人の脳内の微かな記憶としてだけ、残っていた、断片的な話です。
「……あんたも、あの時代を知っとるじゃろう?」
会長は、私に向かってそう言われました。
たぶん、あの時代を知らない人に向けては、出てこなかった言葉だったのだと思います。
その時に私は、ふと思ったんです。
この一言が出てきたあとならば、きっとAIのほうが、私よりもずっと上手に整理してくれるかもしれない。
話の前後関係を読み取って、重要な部分を抜き出して、きれいな文章にしてくれるんだろうなと。
だけど。
この一言。
つまり、「そう言えば」が出てくるまでは、その言葉は、この世のどこにも書かれていなかったわけだから。
それは、私が聞いて、私が受け止めて、初めて言葉(言語化)になったものだったわけです。
つまり、何が言いたいかと言うと。
そこに、私が言う「デコード」のもう一つの仕事があるのかもしれないということです。
デコードには、二つの仕事があると考えています。
半分は、出てきた言葉を「解く」こと。
これは、断片的な微かな記憶を“構造化”することです。
そして、もう半分は、その言葉を「話してもらう」こと。
これは、先代の脳内で直感的に演算されて出てきていた、瞬間的な意思決定の思考を“言語化”することです。
前の仕事は、AIがどんどん上手になっています。
きっと、これからもっと上手になるでしょう。
でも、後ろの仕事はどうでしょうか?
「この人になら話してもいいかな」
「この人なら、あの頃のことを知っているかな」
そんな、人と人との間にある小さな、共感という感覚。
そこから、何十年も眠っていた言葉が出てくることがあります。
少なくとも、2026年10月の私は、そんなふうに感じています。
だけどもしかしたら、半年後にこの記事を読んだ人が、、、
「何を言ってるんだコイツ、今はAIが全部やってるよ(笑)」
と、鼻で笑っているかもしれませんけどね。
そのときは、そのときです。
近い将来そうなると思いますが、そうなったらその時に、答え合わせのコラムを書きますね。
ですが、今日のところは、
「デコード? そんなのAIでできるだろ」
への答えとして、
「はい。かなり、いいですか?かなりですが、できますよ」
と笑って答えておこうと思います。
そのうえで、もう一つ。
「じゃあ、その言葉は、誰になら話してもらえるんだろうか?」
そんなことを、今日は少し考えてみました。
今日のコラムを読まれて、「確かにそうだよね、AIでいいんじゃないか?」と興味を持たれた方、まだまだ、完全な答えにたどり着いてはいませんが、以下の記事を読んでいただけると、きっと納得していただけると思いますので、ぜひ。
AIの進化は、計り知れないスピードと底知れない可能性をもっているのだと思います。
ですが、感情に絡みついている微かな記憶の積み重ねから出来上がる人間性は、少なくとも今は、どうやっても再現できる気がしません。
この全てを読み解くことは、残念ながらデコーダーである私にも無理です。
でも、逆に言えば、だからこそ面白いのだと思います。
【参考記事】
「なぜ、先代のAIエージェントは、まだ誰にも作れないのか?」
「息子には言えんのだが。なのになぜ、初対面のあんたには話せるんじゃ?」
「思考資産」承継デザイン研究所
霧香ゆうひ(夕燈)
デコーダー/心理カウンセラー/作家


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