親の会社を継いだけど『辛い』と苦悩するあなたへ
親の会社を継いだけど、何をすればいいかわからない。──MBAも、他社での武者修行も、家業の前では、なぜか無力だった。
知識も経験も積んだはずなのに、継いで1年、迷走が止まりません。
30-Second Summary
親の会社を継ぐ前に、MBAで経営を学び、他社でも武者修行を積んだ。
自分としては準備は万端だったはずなのに、いざ会社を継いで、自分が社長になってみると「何から手をつけていいかわからない」さらに「一つ一つの決断に自信が持てない」という迷走状態に陥って迷走する二代目社長は、ほんとうに少なくありません。
実はこの感覚には、組織心理学でいう「リアリティ・ショック」が関係しています。
本記事では、なぜ知識と経験があるのに現場で無力感を覚えるのか、そのギャップの正体を整理し、迷走の中でも前に進むための考え方をお伝えします。
会社を継いだのに、何をすればいいかわからない。
ほんとうに会社を継ぐ前は、準備は万端のつもりでした。
MBAで、経営戦略もファイナンスも、組織論も一通り学んだしこの領域では最高峰の知識を身につけたという自負がありました。
さらに他社にも修行に出て、現場のオペレーションも、マネジメントの厳しさも経験してきました。
だから、自分の会社を継ぐころには、「ある程度は何とかなる」と思っていたはずなのです。
いや、むしろ意気揚々と、自分なりの改革案を引っ提げて社長に就任したつもりでした。
ところが、いざ継いでみると、様子が違ったんですよね。
まず、何から手をつければいいのか、わからない。
目の前の仕事はちゃんとこなせているはずなのに、「経営している」という実感がない。
会社を継いで1年経っても、ずっと迷走しているような感覚が続いているのです。
この状態だと、正直かなり戸惑うと思います。
だって、準備は完璧にしてきたはずだからという自信があるからです。
なのに、何から手をつけていいかわからない
MBAで学んだフレームワークは、たしかに立派なものです。
それは疑いようのない事実だと言い切れます。
戦略の立て方、財務分析の方法、組織設計の理論。
どれをとっても、今や経営を語るうえでは欠かせないものばかりです。
でも、実際に社長の椅子に座ってみると、目の前にあるのはそういう「きれいな課題」だけではありません。
長年働いているベテラン社員との、微妙な力関係。
先代の時代からの、よくわからない取引先とのしきたり。
数字には出てこない、社内の空気や、誰が誰に何を言えるかという力学。
実はこういうものは、MBAのケーススタディには出てきません。
もちろん、他社での武者修行でも、そこは「他人の会社」だったからこそ見えなかった部分なのです。
だから、知識や経験がなかったわけではないんです。
ただ、その知識や経験が使える形をしていない現場に、いきなり放り込まれた。
そんな感覚に近いのではないでしょうか。
MBAで学んだことと、家業で必要なことのズレ
実はこの状態、心理学や組織論の世界では、すでに名前がついているんです。
リアリティ・ショック(Reality Shock)と呼ばれるもので、もちろん名前を覚える必要はありません。
ただ、「なるほど心理学では解明されているんだな」と知っていただくだけで、安心感が倍増するはずです。
もともとは1958年、社会学者のエヴェレット・ヒューズが提唱した概念で、その後、組織心理学の分野でも「新しい環境に入る前に抱いていた期待やイメージ」と、「実際に直面する現実」との間に生まれるギャップ、そしてそのギャップがもたらす衝撃を指す言葉として使われています。
新入社員が入社後に感じる「こんなはずじゃなかった」という感覚も、この現象の一種としてよく研究されています。
ただ、二代目の感じるリアリティ・ショックは、これよりもう一段厄介です。
なぜなら、新入社員なら「まだ何も知らない自分」を前提に助けを求められますが、二代目の場合はそうはいかないからです。
周囲からは「継ぐ準備をしてきた人」「経営を学んできた人」として見られています。
むろん本人も、頭ではそのつもりでいます。
にもかかわらず、現場では「何もわかっていない」という感覚に襲われる。
この「準備してきたはずの自分」と「実際は何もわかっていない自分」のギャップこそが、二代目特有のリアリティ・ショックの正体なのです。
二代目社長が自信満々に学んできたことと、今すぐ現場で必要なことを並べてみると、こういうズレが見えてきます。
| 領域 | MBA・他社経験で身につけたもの | 家業の現場で今すぐ必要なもの |
| 意思決定 | フレームワークに沿った論理的な分析 | 「あの人がどう受け取るか」という関係性の読み |
| 組織 | 制度・仕組みとしての組織設計論 | 誰が実質的な発言力を持っているかという生きた力学 |
| 取引先 | 契約・条件・交渉理論 | 先代の代からの、言葉にならない信頼と貸し借り |
| 判断のよりどころ | 一般化された経営理論・成功事例 | この会社独自の歴史・過去の経緯・暗黙のルール |
左側は、社外で通用する「持ち運べる知識」です。
右側は、この会社の中でしか通用しない、「その場に染み込んだ知識」です。
そしてこの右側こそが、まさに私が「思考資産」と呼んでいるものの正体でもあります。
どうでしょうか?
少し整理がつきましたか?
迷走している自分を、責めなくていい理由
ここまで読んで、こう思うかもしれません。
「そうか!自分には、右側の知識が足りていないのだ」と。
でも、それは能力不足でも、努力不足でもありません。
なぜなら、右側の知識は、外で教わることができないものだからです。
先代がどうやって、あの取引先との信頼を築いてきたのか?
なぜ、あの社員には強く言えないのか?
なぜ、この判断だけは慎重にしているのか?
こうしたことは、教科書にもケーススタディにも載っていませんよね。
先代の頭の中にしかない、いわば「その人だけの経営の勘所」といえるものです。
実を言うと、それを継いだ人間が、最初から知っているはずがないんです。
だから、迷走しているのは、準備不足のサインではなく、むしろ「学べる範囲はきちんと学んできた」証拠だとも言えます。
学べるところは全部やった。
だからこそ、学べなかった部分の大きさに、今ぶつかっているだけなんですよね。
もしかすると、勘のいい人だったらここで一つの真理に気づくと思います。
「この表の右側って、親父の頭の中にしかない “暗黙知” じゃないか」
これはどうやっても学べません。
もしもあなたがそれを知ろうとしたならば、父親と同じ経験をしなければならないことになります。
つまり、普通に考えると、父親の暗黙知を全て知るためには、40年かかることになります。
そんなことは絶対に無理です。
ですが、この40年の暗黙知が、資産であることは明確にご理解いただけたと思います。
これが、「思考資産」のほんとうの正体です。
迷走の中でも、進むための最初の一歩
では、この迷走から抜け出すには、どうすればいいのか?
いきなり「先代のすべてを理解しよう」とすると、途方に暮れてしまいます。
そうではなく、まずは一つひとつ、「なぜそうなっているのか」を先代に聞いていくことから始めるのが現実的です。
なぜ、あの取引先とはこの条件で続けているのか。
なぜ、あのベテラン社員には、この仕事を任せているのか。
なぜ、この判断だけは、いつも慎重になるのか。
こうした「なぜ」を一つずつ拾い集めていくことが、MBAですら学べなかった、この会社固有の経営の論理を手に入れる作業になります。
そしてこれは、実は特別なことではありません。
先代の頭の中にある判断基準を、言葉にして引き継いでいく作業。
それこそが、先ほどから繰り返している「思考資産」を継ぐということなのです。
あなたが迷走しているのは、失敗しているからではありません。
知識と現実の間にある、埋めるべきギャップに、今まさに向き合っている最中だからなのです。
その渦中にいることを、どうか責めないでください。
あなたの迷走に対する答えは、すぐ目の前にあります。
もしも、この「先代の頭の中にある判断基準」そのものに関心を持たれた方は、ぜひ以下のHUB記事もあわせてお読みください。
この記事は、きっとあなたの灯台になってくれるはずです。
【HUB記事】
親子間の事業承継がうまくいかない本当の理由──会社は継げても、先代の「思考資産」は継げていない

悩み、苦悩し、迷走するのは、それだけあなたが真剣だからだと思っています。
答えはここにあります。
「親父の会社を継いだけど、ほんとうに辛い」
そう思ったら、ぜひまたここに帰ってきてください。
私はいつでもお待ちしています。
「思考資産」承継デザイン研究所
霧香ゆうひ


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