稟議は通したのに、なぜか胸騒ぎが消えない?|融資担当のジレンマ

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稟議は通したのに、なぜか胸騒ぎが消えない?|融資担当のジレンマ

完璧な事業計画書に押した判子と、その指先に残る、わずかな冷たさ


決算書と事業計画書は、非の打ち所がなかった。
数字も、根拠も、すべてが美しく整っている。
これなら稟議は、間違いなく通るはずだ。

そして実際、通った。

それなのに、面談室を出ていく後継者の後ろ姿を見送りながら、なぜか、ハンコを押した指先だけが、少し冷たい。

「本当に、この人で大丈夫なのだろうか」

その問いは、もちろん口には出さないし、出せない。
出したところで、何を根拠に、と聞かれれば、答えられるはずもない。

間違いなく、数字は、完璧だった。
だから、これ以上は考えたくないという脳内のシャッターが降りる。

その問いは、心の奥に沈めたまま、次の案件に向かう。
これが自分の仕事だから。


その違和感を、なぜ飲み込まなければならないのか

融資担当として、あなたはこれまで、何百件という事業計画書を見てきたはずです。

そのたびに、数字の外側にある、何かを感じ取ってきたのではないでしょうか。
経営者の目の力、言葉の選び方、質問への反応の速さ——そうした、稟議書には書けない情報を、あなたは無意識のうちに、いつも読み取ってきたはずですよね。

ですが、実を言うとその感覚、確かに感じ取っているはずなのに、稟議書には書くことはできません。
もちろん、そんなことを書く欄もありません。


書けるのは、数字とその評価だけです。

だから、心のどこかに引っかかりを覚えながらも、あなたは、その引っかかりに、蓋をするより他ありません。
数字が整っている以上、それを覆す理由は、あなたの手元にはないからです。


判断と違和感が食い違うとき、人は違和感の方を消していく

心理学に、「認知的不協和」という考え方があります。

これは、自分の判断や行動と、心の中の感覚が矛盾したとき、人はその矛盾に耐えられず、多くの場合、判断ではなく、感覚の方を無視して、自分を納得させてしまう、という現象です。

「稟議を通した」という、すでに下した判断。
「本当に大丈夫だろうか」という、心の中の違和感。

この二つが食い違ったとき、あなたの中では、静かに、後者が消されていきます。
「考えすぎだ」「数字が示している以上、これでいい」——そう自分に言い聞かせることで、初めて、次の案件に集中できるからです。

さらに、この打ち消しを、もう一段強くする力があります。
それは、あなた自身の立場です。

もし、この融資が数年後に焦げ付けば、その責任は、稟議を通したあなた自身に、静かに、しかし確実に跳ね返ってくることになります。
もしかすると、出世の道筋から、一歩、外れることさえあるかもしれません。

だからこそ、あなたは、疑念を認めるわけにはいかないはずなのです。
疑念を認めることは、自分自身のキャリアに、自ら刃を向けることに等しいからです。
少し大げさに聞こえるかもしれませんが、間違いはないと思っています。

数字を信じることは、会社を信じることであると同時に、あなた自身を守るための、切実な選択でもあります。

稟議書に書けるもの稟議書に書けないもの
内容数字・担保・返済計画経営者の判断基準、組織の内実
根拠の性質検証可能、誰もが同意できる感覚的、言語化しづらい
あなたの立場書けば、責任を分かち合える書けなければ、一人で抱えるしかない

数字が語らない領域に、名前がある

あなたが感じてきたその違和感は、実は、数字が測れないもう一つの層——先代から後継者へ、判断基準そのものが引き継がれているかどうか、という層に向けられたものであるはずです。

私はこの、目に見えない層のことを、「思考資産」と呼んでいます。

事業計画書は、いわば会社の「静止画」ですよね。
どれほど精緻に作り込まれていても、そこには、経営者がどんな判断基準で日々の決断を下しているのか、という「動画」の部分は、写っていません。
1ミリも。

あなたが違和感として感じ取ってきたものは、まさに、この動画の部分の、空白だったのかもしれません。

そして、あなたが感じ取ったその違和感は、きっと100%正しいものだと思います。
私も、事業承継の現場で、そういう場面にとても多く出会ってきましたから。


その違和感には、もう出口がある

数字だけでは測れないその領域に、実は、すでに専門的な技術と、それを担う専門家が存在しています。
(とは言っても、あなたのすぐそばにいるわけではないと思いますが)

それは、先代の脳内にしかない判断基準を掘り起こして、後継者が使える形に翻訳して、実装していく仕事です。

もしかすると、あなたにとっては喉から手が出るほど欲しいものかもしれませんね。

もしも、次にあなたが、事業計画書の向こうに、あの冷たさを感じたとき。
その違和感を、飲み込むだけでなく、後継者に、そっと手渡せる選択肢があると、思い出していただけたらと思います。

その出口について、ぜひ知って欲しいと思います。


💡 さらに詳しく知りたいあなたへ

思考資産という構造について、さらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もあわせてお読みください。

経営深層論理(DDL)とは

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事業承継が、なぜ普通にやれば必ず失敗してしまうのか、その全体構造については、こちらにまとめています。

事業承継が必ず失敗する理由|後継者の悩みの全体像

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親子間の事業承継がなぜうまくいかないのか、その根本的な原因と、思考資産を未来へ残す具体的な方法については、こちらの完全解説ガイドで詳しくお話ししています。

👉 親子間の事業承継がうまくいかない本当の理由──会社は継げても、先代の「思考資産」は継げていない

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それでは、またお会いしましょう。

「思考資産」承継デザイン研究所
霧香ゆうひ(夕燈)

著者プロフィール
kirika-yuhi

著者:詳細プロフィール

「思考資産」承継デザイン研究所 
所長: 霧香 ゆうひ(夕燈) デコーダー/心理カウンセラー/作家

1961年生まれ。広島を拠点に全国の事業承継現場で、経営者と後継者の「魂の同期」を支援する専門家。
30年のHRキャリアで組織の力学を、14年の心理カウンセラー経験で人間の深層心理を、11冊の著書を通じて言葉の精錬技術を磨いてきました。

この三つが交わる場所に、私の専門領域があります。

私が提唱する「思考資産」とは、経営者の脳内に点在する「記憶・判断・哲学」をデコード(解読)し、次世代が迷わず使える「経営深層論理(DDL)」として構造化したものです。

法的・税務的な手続き(箱の整理)は専門家に委ね、私はその「中身(魂)」を救い出すことに全力を注ぎます。

一人の経営者の暗黙知を救うことは、組織を救い、文明が積み上げてきた知恵の総量を守ることに繋がる——これが、私がこの仕事を続ける理由です。

3万人超の事業承継・組織再生の現場に伴走してきた、日本唯一のデコーダー。

霧香ゆうひ

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